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世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す

世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す
ジョセフ・E. スティグリッツ
世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す
定価: ¥ 1,890
販売価格: ¥ 1,890
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発売日: 2006-11
発売元: 徳間書店
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世界最高の経済学者が信じる「こうすれはグローバリズムはよくなる」
 本書は表題の通り、グローバリズムの問題点を挙げるだけではなく、それを改善するための方策について語られている。筆者は、ノーベル賞受賞の経済学者で、元世界銀行副総裁という人物であるので、世界中のありとあらゆるグローバリズムにからんだ出来事について精通している印象がある。実際、過去に見た「ジャマイカの真実」ででてきた話も含め、アジア、アフリカ、南米と次から次へとでてくるので、個人的には、あれもこれもと総合的に考えるよりは、もっとそれぞれの話についてじっくり考えてみたいと思った。
 こういう立場にある人が、グローバリズムは正しく運用すれば、人類に幸福をもたらすということを信じているとことに対して心強いと感じるが、いままで地球環境問題や貧困問題などとても長期的に成功しているとはいいがたいので疑問は残った。もっとも自分は経済学者でも政治学者でもなんでもないので、本書で語られるIMF等の改善策について評価する気は毛頭ないのだが。
 基本的にグローバリズムの悪というのは、弱肉強食の原理と、金儲け主義、そして、「見えないところではなんでも悪いことやってやろう」という人間の性悪説的なところが根幹にあるような気がする。実際、アメリカなどの大企業がやっていることは、驚くほどはっきりと企業のありかたを露呈している。そういうものを法律等でしばってよくなるものなのか。

提言の現実性にやや疑問
2001年にノーベル賞を受賞した経済学者である作者のジョセフ・E・スティグリッツが、
グローバル化によって発生した格差を批判し、正しいグローバル化のあり方について
提言している。

グローバル化は全ての人にとって恩恵をもたらすというのは、可能性であって、必然性では
ない。実際にグローバル化の影響で貧困にあえぐ人々が増えていると筆者は指摘している。

市場の開放が全ての問題の解決になるという、A・スミス以来の市場主義は、現在の様々な
データを見る限り、現実にそぐわない。グローバル化は先進国にとって都合の良いルールで
構成されており、貧困国の発展を阻害している。資本市場の自由化は、投機家たちによる
アジア通貨危機を引き起こすなど、経済の荒廃をもたらした。

さらに筆者はトーマス・フリードマンによる『フラット化する世界』についても厳しい目を
送る。世界はフラット化するどころか、逆フラット化しているというのが彼の主張だ。
コンピューターによって可能になった新たなグローバル化の恩恵を受けるためには、少なく
ともコンピューターがなければ参入することすらできない。現在貧困状態にある国は、ほと
んどがその状態である。


このような歪なグローバル化に対して、筆者は正しいグローバル化が存在すると主張する。
その正しいグローバル化を推進するために政府がすべき諸政策を筆者は提言している。

まず貿易の自由化に対して、途上国の幼稚産業は保護する必要性があることを強調する。
資金面でも技術面でも先進国に比べはるかに途上国は劣っている。その状態で貿易を自由化を
すれば、起こる結果は目に見えているだろう。そこで、先進国は片務的市場開放を行なうべき
だとする。EUによって行なわれたこの試みを、筆者は画期的なものだとして高く評価して
いる。

また、知的財産権としての特許の保護は、経済の発展に重要な障害となると指摘する。ジェネ
リック医薬品の認可問題など、生死にかかわる問題が利潤の問題によって無視されている。

環境への配慮については、先進国は積極的に義務を負うべきである。特に米国の経済規模を
考えると、その責任は大きい。環境問題は外部不経済の典型的な例であり、それを市場に
任せきりにしていたら、環境はますます悪化していくことだろう。

グローバル化をもっとうまく機能させるためには、経済のグローバル化だけでなく、政治の
グローバル化もしなくてはならない。ルールを作るIMFや世界銀行、WTOは先進国に
有利なようにできている。世界の大多数の一般市民にとって重要な諸問題が取り上げられ
ないのは、民主制の欠如が存在するからであり、これは国際社会が協調して是正しなければ
ならない問題である。


筆者の現状認識は、グローバル化の負の面に注目するという点で、見るべきところが多い。
世界のグローバル化を無批判に受け入れがちな日本は、主要な先進国の1つであるため、
このような側面に目が行きづらい。グローバル化によって発生している様々な矛盾を放置
しておけば、それはやがて世界の不安定化を招くことになるだろう。

彼の提言は問題解決のためのポイントを突いている。しかし、これは理想的な解決法であって
現実にどれだけ可能な政策かは疑わしい。社会の不公正さは、どこかに邪悪な人間がいるから
発生するわけではない。自らの利益を最大化させようとする意思が、それを生むのである。
国家が利益を追求するのは、国民がそれを望むからであり、その意思を否定することは、
もはや政策レベルで取り扱う問題ではない。私は筆者の主張が空想論であると否定するほど
荒唐無稽だとは思わないが、多くの人々が啓蒙されない限り彼の主張が実現される日は遠い
だろうと考える。

 グローバリズムがもたらした弊害への警鐘と、これからの処方箋
 スティグリッツ教授の主張は、反グローバリズムで一貫しているが、世界銀行副総裁も務めており、その論理は現場をみてきたからこそ言える具体性を持ったもので、説得力を感じさせる。
 グローバリズムがもたらしたもの、それは勝者がますます豊かになり、敗者は貧しさから抜け出せない国際間の貧富の固定化や、失業の増大による格差社会の出現である。
 それを、著者は知的財産権保護問題のためにエイズ治療薬が使用できない貧困国の問題、天然資源を多く持つ国における不平等、地球温暖化に最も影響があるアメリカが京都議定書に批准しない問題、多国籍企業が途上国においてとってきた行動などなど、主に先進国からみた収奪をいくつも例に挙げている。

 さらに、貿易赤字をたれ流し続けるアメリカと膨大なドルを抱え込む日本や中国の構図は持続不可能であるとし、「世界紙幣」の創設を提唱しているのは新鮮であった。

 本書は弱者の視点から問い直した国際経済論であり、これからの国際経済のあり方を新たな視点から問い直してくれる好著である。

08.01.04 | 世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す | バラ | |

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